宮沢賢治の超有名作「やまなし」。美しい物語ですが、昔から全国の小学生と教員を悩ませてきた難解なお話です。
担任が不在だったので、私が代わりに指導のお手伝い。
子どもたちに訊くと、この「やまなし」の学習はテストこそしていないものの、ひと通り学習は終わっているとのこと。
じゃあ、ちょっと自由にやらせてもらいましょう!わーい!6年生のみんな、勝負だ!

手塚治虫は、この作品を「戦時中の日本」のメタファー(隠喩)と読んで漫画化しています。この前の時間に、「魚」や「かわせみ」、そして「かにのきょうだい」はいったい何を表しているのか、子どもたちと私とで対話しました。
そして、この日の対話の問いは、「やまなしはいったい何を表しているのか?」です。
文学作品と手塚治虫の漫画を読み比べながらの、ショートタイムp4c(対話)となりました。
漫画版やまなしでは「やまなし」は「敵の戦闘機」であり、「やまなしが発するいいにおい」は「投降を勧めるアメリカからのビラ」として描かれています。
さあ、子どもたちは以下に読むか。対話記録をご覧ください。

私「前の時間に『やまなし』が表すものは、人々が欲しいと思っているものだと読んだ子がいたね。素晴らしい読み取りだし、そういう読み取りもあると思います。この対話では改めて『やまなし』が表すものは何か、みんなの話を聞きたいのです」
「私は『やまなし』は平和を表していると思います」
「どうして?」
「漫画では戦争反対の人が殺されたりしたでしょう。本当は反対したいし、反対だって言いたいんだけど言えなかった。でも、みんなは平和を望んでいたし、人々が欲しいと思っているものだと思うからです」
「うん。漫画の最後でかにのお父さんが、アメリカからのビラの「へいわ」という文字について、『平和・・・。いいにおいのすることばだな』って言ってるでしょう。やまなしのいいにおいは平和のにおいのするビラだし、やまなしそのものは平和を表していると思う」
「そうだね。人々は平和な世の中を欲しがっていたんだと思う」
「みんな『平和』だっていう意見みたいだけど、そうじゃないって思う人はいる?」
驚かれるかもしれませんが、これ、子どもの発言なんですよ。学級全体を視野に入れた発言。まさに「子どもがつくる学び」を体現しています。一人一人が対話のファシリテーターなんですよね。
「ぼくは、迷ってるんだ。やまなしはドボンと落ちてきたんでしょう。この時代に人々を怖がらせるような大きなものは原爆があると思うけど、どうも原爆じゃない気がするし・・・」
とここでタイムアップ。

迷いも素直に発言できるセーフティの高さが素晴らしい。
だからこそ、文学作品を多義的に読むことができるんですよね。
タイムアップになっちゃったのが実に残念。私の余計な話が長すぎちゃったのかしら。また機会があれば続きをやりたいね。