1月10日【4~6年学級活動p4c】黙食か?おしゃべりしながらの会食か?
当校が理想とする教育像「子どもがつくる学び 子どもがつくる学校」の学校運営部門でのいよいよ本丸と言っていいかもしれません。学校全体に関わるルールに子どもたちの意見を通り入れます。
実は12月に4年生の数人のお子さんたちから「校長先生にお願いがあります。今給食は黙って食べていますよね。それをしゃべりながら食べてもいいことにしてほしいのです」と直訴がありました。「どうして?」と尋ねると、その理由もしっかり答えます。おおおおおー!ついに来ましたね!待っていたんだよ、君たちのその言葉、そういう、学校を自分たちで変えていきたいっていう思いを!
そこで私は給食担当と生活指導担当の教師に話し、さらに職員全体にも話して、この日の教育活動に持ち込んだのです。
4~6年生の子どもたちが一堂に会して、給食の黙食を継続するか?話しながら食べてもいいことにするか?それとも、今現在やっているように前半は黙食、後半になったら話して食べるのもいいことにするか?これをp4cで対話します。
しかし、なんてったって90人弱の大群です。一体どんな対話になるのかしら?私は、朝から楽しみで眠れませんでした、ははははは。朝は眠らないか。
では、早速対話の様子を見ていきましょう。
まずは直談判に訪れた数人の4年生からです。
「みんなで話しながら食べた方が楽しいし、友だちとの関係もよくなるので、給食は話しながら食べてもいいと思います」
ほかにも数人、怒涛のように同様の意見で畳み掛けます。
やがて別の子どもたちも話し始めました。
「みんなが食べるときに話していたら、あまり食べないうちに給食の時間が終わっちゃうんじゃない?」
「給食を残す人が多くなると思う」
「それに感染症も心配。感染症にならないために黙食が始まったんでしょう。まだ感染症はなくなってないよ」
「唾が飛ぶと感染症になっちゃうかも」
「じゃあ、口元を押さえて、小さい声で話せばいいんじゃない?」
「やっぱり今やっているように、初めは黙食してて、12時30分になったら食べ終わった人は話してもいいことにしたら?」
「そうだね。そうした方が、ある程度感染症対策にもなるし、楽しくも食べられる」
「ねえ、話してもいいタイミングは、時刻で決めるんじゃなくて、食べ終わった人からしゃべってもいいことにしたらいいんじゃない?」
「う~ん。でもそうしたら、食べるのが遅い人はずっとしゃべれなくて悲しいと思う」おおー!友だちの発言から連想されること、推論できることに目を向けた発言ですね。素晴らしい思考力!
「私は最初からしゃべってもいいことにしたらいいと思う」
「そうだなあ。でもさ、しゃべってもいいことにすると、残量が多くなっちゃうし、そうなると『給食は残してもいいものだ』って考える人も出てくるかもよ」おおおおおー!これもまた推論に基づいた発言ですね、素晴らしい!
「感染症対策なんだけど、小さい声で唾が飛ばないように話すようなルールにするといいと思う」
「ねえ、こういうのは?隣の人が食べ終わっていて、自分も食べ終わっている場合にはしゃべってもいいことにするの。話しかけてもいいって言うか」
「隣の人だけだと範囲が狭すぎると思う。周りの人も食べ終わっていて、かつ自分も食べ終わったら話しかけてもいいの」
「ねえ自分で残しちゃいそうって分かっている人は、しゃべらないんじゃないの?」
「やっぱりさあ、みんながちゃんと食べるってことが大事なんだよなあ」あああああー!まさにそのとおり!給食指導の大切なところを突いてくるねえ。
「みんなで楽しく食べてれば、友だちがおかわりするのを見て、自分も食べきっておかわりしようって気になると思う」
ここで意見が途切れたので私が介入。p4cの思考のツール(WRAITEC)の中でも子どもたちが使いにくいとされている発言をかまします。
「さっきの話にもどるんだけど、本当にしゃべっていると給食の残量は増えるのかな?」
「そうですね。50%は本当だと思う。残飯が多いときはしゃべっているときだと思う」
「残渣量が多いときはおしゃべりだけじゃなくて、メニューの好き嫌いにもよるんじゃないかなあ」
ここでこの段階での考えを確認しました。3択で自分の考えに挙手してもらったのです。
① 給食は最初から最後まで、しゃべりながら食べるのがいいと思う人 ・・・ 6人
② 給食は最初から最後まで、黙って食べるのがいいと思う人・・・2人
③ 給食は前半は黙って食べて、後半はしゃべりながら食べるのがいいと思う人・・・その他大勢
つまり、黙食かしゃべりながら食べるのかの2項対立ではなく、第3極を選んだ子が多かったのです。そしてこれは、現行の給食をとるときのスタイルでした。
対話は続きます。
ここで5年生のあるお子さんが対話を深めようと試みます。
「みなさんに質問です。好き嫌いをなくすにはどうしたらいいと思いますか?」
おおー!給食のマナーを超える問い掛けですね。
「苦手な食べ物をなくすよう努力するってことだと思うよ」
「ぼくはね、苦手なものが出ても、自分が好きなものだと思い込むといいと思う」
「ああ、そうだね。苦手なものが入っていないと思い込む」
「それもそうだけど、給食で盛ってもらう時に、苦手なものは少なくしてもらって、盛られた分はがんばって食べる」
「うん。苦手なものでも1回は食べてみようよ」
「嫌いなものは味がないものだと思い込むのがいいんじゃない?」
時間が残りわずかになったので、最後は私が引き取りました。
「みんな、それぞれ一生懸命考えていて、素晴らしいp4cになったと思うよ。給食をとるときに大事にしてほしいことを言うね。一つは対話の中でも出されたけれど「まずは、みんながちゃんと食べること」。もう一つは「食材になってくれた命、それは動物も植物も同じことなんだけれど、そういう命をありがたいと思って食べてほしいんだ。どの生き物も命は失いたくないと思っている。それをいただくんだからね」。
これほどの大人数が同じ会場で一つの問いについて対話するのは初めての試みでしたが、どの子も真剣に対話に参加していました。人数が多い分、一人当たりの語る分量は少なくならざるを得ないのですが、それでも最後まで集中を途切れさせず考え続けていました。
特筆すべきはどの子もただ楽しいだけを望むのではなく、教育の一環として、よりよく成長できる一つの方策として給食を捉えていたことでした。給食は単なるエネルギー補給ではなく、ただ楽しむ場なだけでもなく、残さずいただくことが命を大切にすることにもつながると考えていた子も少なくなかったのです。今までの指導がしっかり子どもたちの中に生きていたということなのでしょうし、何よりも各ご家庭の教育力の賜物であると感じました。
今後は子どもたちの意見を踏まえ、給食の食べ方について職員間で再考することになりますが、「いただきます」「ごちそうさまでした」が、ただのお題目や喫食する合図なのではなく、どのような意味があるのか考えながら食べるようになってほしいと、子どもたちには期待しています。
これからも「子どもがつくる学び 子どもがつくる学校」を実現するために、築地小学校は邁進します!