7月1日【6年理科対話(p4c)】根から吸い上げられた水は、その後どうなるのか?
通常、p4cは「哲学対話」や「探求の対話」と言われ、答えがない問いについて、対話することがオーソドックスとなっています。
ただし、答えを知る前にああだこうだ考え、課題意識を高めておくのは、理科などの答えが決まっている教科指導でも有効だと考えています。
この日、6年生は理科で次の問いについて対話しました。
「植物で根から吸い上げられた水は、その後どうなるのか?」です。
時間は20分間程度と今の6年生にとっては短め。それでも充実した対話となりました。どうぞご覧ください。
教師「植物ってさ、根から水を吸い上げるでしょう。体の中に取り込むというか。で、その後、その水はどうなっちゃうんだろうって、みんなどう考える?」
「私は養分になると思います」
「うん。植物の体の中で養分に変えられて、成長するために使われると思う」(同様の意見が4つ続きます。)
「水って言っても、私たちが飲むようなきれいな水じゃなくて、雨なんかは土の上に落ちるから泥水になっちゃう。泥水も養分になるの?」おおっと!新しい観点からの問いですね。子どもたちの中では水は養分になるというのは分かり切ったことなのかもしれません。
「土にはたくさん水分が含まれているから、それはみんな養分になるんだと思う」
「う~ん。でも雨が降ったとは土と混ざって泥水になっちゃうよね」
「植物は泥も一緒に体の中に取り入れているのかな?」
「もしそうだとしたら、泥水の中の土も成長のために使われるってこと?」(同様の意見3つ)
「自然の中にあるどんな水にも泥って含まれているんじゃない?だから植物は泥も体の中に取り込んじゃう」
「そうかな。泥水に使っていたとしても、根っこはその中で水だけを吸い上げているんじゃない?」
ここで子どもたちの経験が語られていきます。
「前に私たちジャガイモを植えたでしょう、種芋。その時に水をたくさんあげたら、泥水の水たまりみたいになっちゃった。あれ全部泥事吸い込んじゃったのかな?」
「そうなんじゃない?大量の泥水の中には水と土がたくさん含まれているけど、それをいちいち土と水に分けて吸っているとしたら大変だよ」
「あ、ちょっと待って!土ごと泥水を吸っているんだとしたら、畑の土はどんどん減っていっちゃうよね」(賛同する意見2つ)
「そうだね。植木鉢で栽培してたとしたら、植木鉢の中の土はみるみる減っていっちゃう」
「確かに。植木鉢の土は減らないよね。干からびてるなら別だけど」
「例えば大根は土ごと泥水を吸っていたとしたら、大根を切れば中から土が出てくるよね。じゃりじゃりして食べにくい」(会賛同する意見2つ)
「う~ん。でも大根を食べる前にはしっかり洗うよ。だからじゃりじゃりしない。皮もむくから土は付いていないんだよ」(同様の意見2つ)
「私は泥水でも土は吸わないで、水だけ吸っていると思う。根がそういう構造になっているんだと思う」
教師「そうなんだよ。植物は根っこで土は吸わず、水のみを吸い上げることができるんだ。ここで最初の問いに戻るんだけど、根から吸い上げられた水はどうなるんだろうね。根で吸い上げられた水は、茎の中の水が通る道を通って葉に行く。その後どうなる?
「葉とか茎とかで水は全部養分になるんじゃない?」
「私は、全部じゃなくて、一部は養分になるけど、全部じゃなくて・・・。よく分からないんだけど・・・」
そうそう!頭の中でよく分からないような、まだぼんやりした、混沌とした考えをそのまま出し合うことで、よいよい対話になっていくのだろうと思います。この一言、隠れたファインプレーです!
「全部すぐに成長に繋げられるんじゃなくて、一部は植物の体の中にためておかれるんじゃないかな」
「うん。一部は養分に。一部はためておく」
教師「みんな素晴らしいよ、よく考えたね。実は葉っぱの裏側には小さな孔がたくさんあいているんだ」
子どもたち「ええー!」
教師「それが何の役割をしているのかは次の時間に追究しよう」
植物が吸い上げた水は養分になるのではなく、養分を運ぶために使われます。ただ、この知識を明らかにするのは今じゃないでしょう。次の勉強のときに明らかにしたいと思います。
この時間mのp4cの意味ですが、きっと最初から「吸い上げられた水は道管を通り、さらに師管を通って水によって養分は各所に運ばれます」と教師が正解を話したとしたら、子どもたちの記憶には大して残らないでしょう。正解を知る前に子どもどうしでああだこうだと対話することに大きな意義を感じています。
さて、対話をご覧いただくと、子どもたちが自分たちの発言を吟味し、そこから考えられることを表明した意見がいくつも見られます。「もしその発言のとおりだとしたら、〇〇になるよね」などなど。これがp4cが思考力を鍛えると言われている所以だと思います。
次の理科の時間が楽しみになってきました。
それにしても、6年生、思考力が素晴らしいですね。