1月15日【1年道徳p4c】外国の料理

これまで素晴らしい対話を展開している1年生。この日は担任がファシリテート。実は、このファシリテートが素晴らしかったのです。

まず、問い(課題)の設定の妙です。教科書にはインドのカレーやアメリカのハンバーガー、中国の水餃子などの写真が掲載されています。これらの写真を見ながら、担任は子どもと対話していきました。「おいしそう」「私、これみんな食べたことある」「この写真の料理はみんなおいしいよ」「餃子はスープの中に入っているね。焼いてない」「私ね、こういう餃子食べたことあるよ」「水餃子って言うんだよ」「うん、つるんとしておいしいんだ」「インドのカレーは日本のカレーと違うね」「インドのカレーってものすごく辛いんだよ」「へえ、そうなの」など子どもがどんどんつぶやいているのを担任は整理しながら、「どんな料理が好き?」と問い掛けました。すると、「カップラーメン!」という声。ははははは。確かにカップラーメンはおいしいわなあ。ところが担任はこれを好機として逃しません。「ねえ、みんな。カップラーメンってどこで生まれたのか知っている?実は日本で生まれたんだよ」と話すと、へーと子どもたちにとっては意外な感じ。


さらに教科書を見ながら、子どもたちに問い掛けました。
「写真の子どもたちは何て言ってる?それぞれの国の子どもたちはそれぞれの国の料理を紹介しながら何を伝えたいんだろうね?」
子どもたちは「ええとね、自分の国の食べ物の好きなところだよ」「自分の国の好きな食べ物」「自分の国のことについて、食べ物の他にも紹介したいことがあるんじゃないの?」と子どもたちの発言があったところで、担任は「じゃあ、p4cの問いは何にする?」ととどめの一撃。子どもたちが選んだ問いは、「外国の料理って、おいしいのかな?」に決まりました。おおー!いい問いですね。さすが子どもたち、さすが担任です!

もう一つこのp4cの素晴らしいところを挙げるとするなら、対話における子どもたちの発言と担任の対話を深める問い掛けでしょう。これについては、以下の対話をご覧ください。

では、対話の流れをダイジェストで見ていきましょう。
「私はおいしいと思うよ」
「でも、辛い料理もあるでしょう。苦手な人もいるかもしれない。でも人それぞれだしね」
「私たちが辛いって思っても、その国の人たちにとっては違うかもよ」
「うん、その国の人たちにとってはおいしいかも」
「食べ物の味は国によって違う。日本では辛いと思われても、その国の人たちにとってはおいしいと思うよ」
「インドのカレーって、日本と違ってパンみたいなのにつけるおかずがたくさんある。だから辛いおかずがあっても、別のおかずを食べればいいから、全く食べられないってことはないんじゃない?」
私も発言しちゃいました。「私中国に行ったときに食べた料理はものすごく辛かったの。で、小学校で給食も食べさせてもらったんだけど、それもものすごく辛かったのよ。で、『1年生もこんなに辛いの食べるんですか?』って訊いたら、『はい、普通においしいって食べてますよ』って答えだったんだよ」
「やっぱり、日本の私たちにとっては辛くても、中国の人たちにとってはおいしいんだよ」
「ほかの国でも同じ。インドのカレーだって、インドの人は辛くてもおいしいと思うと思う」
「その国の人たちは、自分の国の料理を外国の人にもおいしいって言ってもらえると嬉しいと思う」

担任が再び深める発問をします。「さっきの話なんだけど、どうして教科書の子たちは自分の国の料理を紹介してくれたんだろうねえ?」
「みんなに自分の国の料理がおいしいって思ってほしいんだと思う」
「みんなに食べてもらいたいんだよ」
「教科書に載ってる国以外の国の人も、自分の国の料理をおいしいって言ってもらいたいと思ってるよ、きっと」
「国によって、おいしいって感じ方が違うと思う」
「料理に入っているものも違うし」
「それぞれの国の人は、『私の国の料理は、私が好きな味です』って伝えたいと思うよ」
「あなたはどんな料理が好きですか?って訊きたいかも」

いよいよ道徳の時間も終盤です。
担任「みんなは日本の料理で紹介するとしたら、どんな料理を紹介する?」
「ぼくは納豆ご飯」
「私は日本のカレーライス。すごくおいしいよって」
「カレーライスはご飯も使われてるから、すごく大事」
「自分の国の好きなところも言いたい。教科書の子たちは料理のことおいしいって言ってるけど、自分たちの国もいい国だよって言いたいと思う」
「うん。国のいいところって、いろんな感じがあるから、全部好きって言いたいよね」

何と子どもたちの発言が、この対話をまとめているようになっていますね。

対話自体は同じようなところを行きつ戻りつしていますが、それでも全体を見るとじっくりじっくりと深いところに進んでいるのです。
担任が最後に一言。「みんなは、これからいろいろな国の人と付き合うことがあると思う。そういう時には、相手の国のことも大切にしながら付き合うといいね」

恐るべし、1年生!恐るべし、担任!
「外国の料理はおいしいのか?」という問いを窓口にして、気がついたら、子どもたちの対話で国際理解の大切なところまでたどり着いていました。
何というp4cでしょう。これが1年生だってことが信じられません。
お見事!
1年生のみんな、今の気持ちを持っていれば、世の中は分断されることなく、世界は平和になると思うよ。君たちが大人になる日が楽しみです。

 

タグ p4c