6年生は全校児童を視野に入れています。全校の挨拶がよくなるためにはどうしたらいいか対話で深めます。
まずは、現状確認です。
「校長先生が毎朝児童玄関で挨拶していらっしゃるでしょう。私校長先生にはちゃんと挨拶してるよ」
「私は低学年が私たち高学年を怖がったらかわいそうだなと思うから、優しく挨拶してる」
「私、松の子委員会の活動として、毎朝玄関で挨拶してるけど、挨拶を返す人って決まってるんだよね。挨拶返さない人はいつも返さない」

この次の発言で対話が動き始めます。
「皆さんに質問です。全校の中で一番挨拶がいいのは誰だと思いますか?先生方も含めて」
おおっ!この質問は、対話全体を視野に入れた発言ですね、よいモデルから学ぼうとする対話にしようと。素晴らしい。
「私は〇〇先生。毎朝玄関に立って私たちにあいさつしてくださっているでしょう。私たちの挨拶をよくしようって真剣なんだなって思う」
「私は担任の〇〇先生。挨拶対話(p4c)の前だったか後だったか、笑顔で挨拶してくれて嬉しかったなあ」
「私は〇〇先生。いつもなんだけど、大きな声ではきはきとしている」
「私はクラスメイトの○○さん。必ず私の近くに来て挨拶してくれるんだよ」
「私は〇〇さん。私の名前を付けて挨拶してくれるんだ」
「私は〇〇さん。挨拶するときの笑顔が素敵だと思う」
「ぼくは〇〇さん。元気に挨拶してくれる」
「でもさ・・・、ぼくら思春期でしょう。だから、挨拶するって少し恥ずかしいというか・・・」
「ぼくは〇〇さんの挨拶がいいと思う。教室内だけじゃなくて、教室外でも様々なところで挨拶してるよ」
「ぼくは〇〇さん。〇〇さんもわざわざ近くに来て挨拶してくれる」
「私は〇〇さん。歩いているとすれ違いざまに優しく、明るく挨拶してくれる」
「あ、私も〇〇さん。元気に挨拶してくれるよね」
「ぼくは〇〇さん。教室の一番後ろから一番前にまで聞こえるような大きな声で挨拶してくれるんだ」
「私は〇〇先生。いつも笑顔で明るく優しく挨拶してくれる。松の子委員として挨拶するときも笑顔で挨拶してくれるんだ」
「ぼくは〇〇先生。すれ違う時、絶対挨拶してくれるよ」
どんな挨拶が相手の心に響くのか語られていきました。
さらに別のお子さんが次の発言で対話を別次元へ持っていこうとします。
「ねえ、みんなに訊きたいんだけど、挨拶をしない人にはどうしたらいいと思う?」
理想を語り合うだけではなく、挨拶がよくなるための具体策が語られていきました。それも全校の子どもたちの挨拶がよくなるようにです。
「そうだなあ。いきなり大きな声で挨拶しようって言っても無理だろうから、毎日ぼくからコツコツと挨拶していく。そのうち慣れて自分からしてくれると思うよ。最初は小さい声かもしれないけど」
「先生から挨拶されても返せない人には、励まして必ず返そうよって勇気づける。これを毎日毎日繰り返しやる」
「そうなんだよねえ。でも私は自分からはちょっとできないかも・・・」
「挨拶されれば相手も少しは嬉しく感じるんじゃないかな。挨拶はした方がいいよ」
「そうだよね。挨拶はこれから生きていく中で大事なことだから、義務教育のうちに挨拶できるようにしておく必要がある」
「私たち、挨拶について何回もp4cしてるけど、あまりよくならないよね」
おおおおおー!この問い直しは、口先だけではなく、また、単なる行動訓練でもなく、挨拶の習慣化や挨拶に対する意識変容の難しさに直面していることを言語化していますね。素晴らしい。
そして、この問い直しにさらに自分なりに次のように解を持とうとしているのもまた素晴らしいです!
「うん、そうだね。p4cを何回もしてるのに変わらないのは、挨拶しようって意識がないからなんじゃない」
「挨拶できない人って、仲がいい人にしかできないのかな?」
「私、松の子委員会で朝挨拶してるけど、挨拶返してもらえない人には挨拶したくなくなっちゃう」
「でも、逆にそうだからこそ、そういう人から、たまにでも返してもらえると嬉しいよね」
「ぼくは校長先生には挨拶できるんだけど、松の子委員会の人とかその他の人には挨拶できないんだよね。だからできるようにしたい」
「慣れるとできるようになるんだと思うよ」

「みんなに訊きたいんだけど、朝立ってあいさつしてくれている松の子委員会の人には、挨拶してる?」
挙手をしてもらうと、挨拶してるって人は10人くらいでした。
「挨拶しても喜ばれないんじゃないかって思っちゃう」
「私は挨拶する方だと思うけど、挨拶しても返してもらえない時は『聞こえなかったんだな』って思うようにしてる」
「あまり関わりのない人には挨拶してもなあ」
「普段自分から挨拶していても、毎回挨拶を返してもらえないと悲しい。それが積み重なっていくと、やっぱり挨拶したくなくなっちゃうよ」
「普段挨拶してない人に挨拶すると、変な空気になっちゃいそうで・・・」
「私、挨拶なんかしても意味ないって思ってたの。でも家族で挨拶し合っていたらいい気持になっていったよ」
「私たちの学校の中だから、私たちが挨拶して、もしも返してもらえなくても大丈夫だよ」
「自分から挨拶してるとさ、挨拶を返してもらったとき、とっても嬉しくなるってことが分かった。今では自分から自然と挨拶できるようになったよ」
「仲いい人じゃないと、挨拶しても返してもらえないって思ってる人がいるんじゃない?」
私「こっそりカウンター持って、休み時間に校舎内をグルグル回って、何人の人が挨拶返してくれるかカウントするのはどう?で、結果を発表してみんなに意識してもらうの」
「ああ、それ私5年生のときやってた。こっそり数えるのもいいんじゃない?」
「そうか、秘かにカウントするのね。ゲームみたい」
「でもさ、それってずうーっとやり続けるわけじゃないでしょう。やる期間が終わったら、元に戻っちゃうかもよ」
「どうしたらいいんだろう?」
時間切れとなり、結論が出ない対話になりました。問いは、to be continuedとなりました。「つづく」ですね。
6年生は、ただ単に「いい挨拶とはどういうものか」と理想を語り合うだけではなく、その前に立ちふさがる心理的ハードルにも目を向け、さらにそれを乗り越えるにはどうしたらいいかにまで考え始めたのです。
