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4月25日【6年】p4c第3弾!
築地小学校でのp4c第3弾は6年生!ついに来ましたね。満を持しての登場です!
テーマは「いじめ」。まずはこのテーマに沿って、対話したい問いを子どもたちが出し合ったところ、素晴らしい問いが並びました。それらを5つに分類したのが以下のものです。
① どうしていじめは起きてしまうのか?
② いじめをさせないためには、どうしたらいいか?
③ いじめはどこからどこまでか?(いじりといじめの違い)
④ 幸せとは何か?
⑤ どうしてぼくたちは生きているのか?
* ④⑤は一見いじめとは関係ないようですが、いじめについて根本的なことにまで考え深めると、到達する境地なのでしょう。すごい!
上記の中で、同様の問いを出した子が一番多かったのは①なのですが、投票で選ばれたのは、③「いじめはどこからどこまでか?」でした。一番関心があり、一番他の子の意見を聞きたい問いということなのでしょう。
では、対話の様子を見ていきましょう。
「私は小さいとき、「いじめ」か「いじり」か分からない時がありました。それでこの問いでみんなと話し合いたいなと思ったのです」
「いじめといじりの違いなんだけれど、いじめは暴力で相手が嫌な思いになるものを指すと思います。一方、いじりは相手を嫌な気持ちにさせないから、やってもいいと思います」
「私もそう思います。本人が嫌な思いをしていればいじめ、嫌な思いをしていなければいじりって言っていいんじゃないかと思います。笑っていたりとか」
ここで私が問いかけます。
「ねえ、テレビを見ていると、芸人が相手をいじって笑わせることがあるよね。いじられた方も笑ってる。でも、あれって心から笑ってるんだと思う?」
「ぼくは嫌な思いと面白いというのと半分半分かな。いや、自分で面白いって思う方が多い気がする」
「芸人はいじられて笑いをとっている。自分で望んで芸人になったんだから・・・、嫌でやられているわけじゃない」
「うん。きっとテレビの週録の前とかに打ち合わせてやっているんだと思うよ。いじられ方とか、予め分かってる」
「でもさ、芸人でもやっていいことと悪いことがあると思う。いじる方がそういうつもりがなくても、相手が本当に嫌な思いをしてるなら、それはいじめ」
「からかわれていて、いい気持になるなんてことはない。言っている方も嫌な気持ちになってるかも。でも芸人で自分が望んで笑いをとるためにいじられているなら、話は別」
私が再度登場。
「芸人ならという条件は外そう。普段の生活でいじられている場合、嫌な思いをしているかどうかってどう見分けたらいい?笑っているように見えても、心の中では泣いていることもあると思う」
「いじられている内容で、ひどいいじりなら、それはいじめ」
「いじりかいじめかって判断するのは難しいみたい。いじってるだけのつもりでも、いじめになっちゃってることってある。人に話す前には、これはいじめになるのかどうか、よく考えなきゃだめだと思う」
と、ここでタイムアップ。
簡易の自己評価では、このp4cでは「よく考えた」「友だちの意見をよく聞いた」「対話によって自分の考えが深まったり広がったり、考え自体が変わったりした」のすべてに肯定的評価をした6年生はなんと全員!
子どもたちがじっくりじっくり考えた,約20分間でした。
さて、授業後のエピソードを一つ紹介します。
あるお子さんが私のところに来て話してくれたのです。
「校長先生、もし、いじられている人がいたら、ぼくはその人を心配して『大丈夫?』とかって声を掛けようかなって思ってたんです。でも、声とか掛けない方がいいんじゃないかなって思い始めたんです。逆に傷つけちゃうこともあるんじゃないかなと。だから相手に何か言う前には相手を傷つけないように考えて話そうって思うんです」
授業が終わっても問い続けるこの姿勢はホント素晴らしい!この対話が子どもたちにとって如何に対話するに値するものであったかが分かるエピソードです。
質の高い対話だと、問いについて考え続ける姿勢が育成されるのでしょうね。6年生のみんな、お見事。
4月18日【4年】対話による詩の授業
築地小学校における2回目となるp4c(対話)の授業は、4年生の国語。
まどみちお作の『赤とんぼ』を対話で深めます。
こんな詩です。
つくつくほうしが / なくころになると、 / あの ゆうびんのマークが / きっと 知らせにきます。 / 金色の空から / もう秋ですよ・・・・・・って。
p4cは対話したい内容「問い」は子どもが設定します。
今回、子どもたちが設定した問いは「『ゆうびんマークが知らせにきます』ってどういう意味?」です。まさにこの詩のポイントとなる部分ですね。
この難解な詩に子どもたちは挑みます。どうなるのでしょうか?
では見ていきましょう。
とは言え、子どもたちにとっても難しいと見えて、なかなか手が挙がりません。みんなじっくり考えているのでしょう。
やがて、あるお子さんが発言しました。「何で赤とんぼって書かず、『ゆうびんマーク』って書いてあるのかなと思います」。
おー!問いに対して問いで返すー!すごい!
しかし、この発言はほかのお子さんたちには「???」のようです。
「それってどういうこと?」
「赤とんぼがどうして『ゆうびんマーク』なのかなって」
まだみんな???です。
そのうちに小声で話し合っていた二人のお子さんが、あっ!をひらめいたようで、発言しました。
「ほら、赤とんぼって羽根と胴体でゆうびんマークみたいでしょう?」
そこで私は補足のイラストを提示すると、ああっ!と一同なるほど納得。
さらに「どうして郵便マークが赤とんぼだって分かったの?」という問い掛けに、「だって詩のタイトルが『赤とんぼ』でしょう」という回答に、ああっ!と一同なるほど納得
そんなやり取りの最中に、あるお子さんが発言。
「分かった!春夏秋冬って季節は変わるでしょう。夏が終わる頃に、つくつくほうしが『もう夏が終わりますよ』って鳴いて伝えて・・・、う~ん、パス」
考えがまとまらず、言いよどんだお子さんの発言を別の子が引き取ります。
「夏の終わりは蝉が鳴いて知らせて、で、その声を赤とんぼが聞いて、知らせに来たっていうことなんだよ」
対話前には、この詩全部の意味が分からないといったお子さんが少なからずいたのですが、対話をとおして詩の読解を進めた我らが4年生。
発言数は必ずしも多くはなかったのですが、じっくり考えながらこの謎解きp4cを解決することができました。
対話中は友だちの発言をしっかり聞こうとする姿勢が印象的だった4年生。今後更なる成長の予感がプンプンします!
4月16日【5年】探求の対話p4c!
5年生はこの日初めて探求の対話p4c(以下「p4c」)にチャレンジしました。
p4cとは対話の一つの手法です。
子ども自らが設定した問いについて、学級全員で対話するのです。
子どもたちに何について対話したいか尋ねると、問いが出るは出るはのオンパレード!
それも「なぜ戦争は起こるのか?」「なぜ人は差別してしまうのか?」「人はどうして死ぬのか?」「お金持ちに対してと、貧乏な人に対してとでは、どうして態度を変えてしまうのか?」「どうしてこの社会には競争があるのか?」「お金には何の価値があるのか?」などなど、社会学的、生物学的などあらゆる学問の根源的な問いばかり。ある意味哲学的な問いですね。
そうなのです。「p4c」とは“philosophy for children”の頭文字をとったもので、子どもの哲学対話と呼ばれることもあるのです。
さて、これらの問いの中で、子どもたちが選んだのは、「子どもの頃に道徳で学んだはずなのに、どうして大人は悪口を言うのか?」です!かー、厳しい問いが選ばれましたね。
では早速対話の様子を見てみましょう。
「お父さんが仕事で苦手な人の悪口を言うことがあるから、どうしてかなと」
「それは人間だからだよ。人間だから好きな人と苦手な人がいる」
「快適だからだと思う。悪口を言われることによって、悪いところを直してくれれば、嫌な人はいなくなって、世の中は快適になる」
「うん。人がそれぞれ嫌なところを直した結果、嫌な人がいなくなれば、住みやすい世界になる」
「でも、人には感情があるから仕方ないんじゃない?」
「私も〇〇さんに似ていて、人には好きな人もいれば苦手な人もいる。嫌いな人のことは陰口を叩いちゃう」
「一人じゃ面と向かって言えないことでも友だちと一緒なら言えるってことあるでしょう。こっそり味方をつくりたいんだと思う。それで一緒に言ってもらう」
「大人になると仕事上のストレスが増えるよね。だからそのはけ口として悪口を言っちゃう」
「そもそも人には悪口を言う脳みそがあるから」
「仕事上で悪口を言われる人は、仕事をしていないからじゃない?」
「私は、悪口を言う人って、その人のいいところを見ないで、悪いところだけ見ているからだと思う」
「うん。好きな人に対しては、その人のいいところしか見えなくて、苦手な人に対しては、その人の悪いところしか見えていないんだと思うよ」
「そう。ある意味、決めつけちゃってるのかも」
ここまで、なんと子どもたちだけで対話を回しているのです。
無駄口をたたいている子はいません。発言している子をみんなが凝視しているのです。すごい対話意欲です。
ここで私も発言。「ねえ、さっき『悪口を言うことによって世の中を快適にしている』という意見があったけれど、悪口を言うと快適になるのかな?」
「悪口を言った人はスッキリするから快適になるってことなんじゃないの?言われた人は嫌だろうけど」
「私も〇〇さんと同じで言った人はスッキリするかもしれない。だけど、言われた相手は傷つくから、それは嫌だなあ」
「確かに言った人はスッキリするかもしれないけれど・・・」
私が2度目の発言。「言われた人が言われたことが分からなければいいんじゃないの?誰も傷つかないよ」
「う~ん。でも誰かが、悪口を言われた人にばらすかも」
「私も〇〇さんと同じで、『悪口を言われてたよ』ってばらされたら、言われた人がかわいそう」
「私は悪口は言っちゃだめだと思う。でもモヤモヤする場合には、悪口を言ってもいいのかな。いや、やっぱり直してほしいところがあれば、信用できる人に相談したらいいんだと思う。『どうしたらあの人の悪いところが直るのだろうか』って」
ここでタイムアップ!
誰からも発言を否定されないというセーフティなルールのもと、子どもたちは本音で語り合い、悪口を言いたくなる心理的状況とそれを超える対応策にまで考えを及ばせました。
対話の問いを子どもたち自らが設定し、子どもたち自らが対話を回し、子どもたちが自ら考えを深めた、この15分間。子どもが主体的に学びを深めたこのp4c。
5年生恐るべし!これが彼らにとって初めてのp4cとは思えませんでした。
このようにp4cを積み重ねることによって、「ワンダー(知的好奇心)」が刺激され、「セーフティ(心理的安全性)」が醸成されることが期待されます。
この調子なら、すごいことになりそうですね。われらが5年生、お見事!