2025年1月の記事一覧

1月29日【6年国語p4c】扉の詩

光村図書の国語の教科書には、どの学年でも表紙をめくるとすぐに詩が掲載されています。いわゆる「扉の詩」というものですが、いずれもなかなか難解なのです。
6年生の教科書には、会津の詩人 羽曽部忠さんという方が書いた以下の詩があります。
タイトルは書かれていません。
「一まいの紙から、
 船が生まれる。飛行機が生まれる。
 ひとかたまりのねん土から、
 象が生まれる。つぼが生まれる。
 生まれる、生まれる。
 わたしたちの手から次々と。」
う~ん分かるような、分からないような・・・。難解ですね。
今回はこの詩をp4cで深読みしてみようと思います。

p4cを行う前にメタファー(隠喩)という手法を説明しておくとともに、問いは時間が限られていたので私が設定しました。
「教科書編集部は、この詩を冒頭に掲載することで、私たちに何を訴えているのか?」です。
なお、今回ファシリテーションは私が行いましたので、対話を記録できませんでした。
似ている意見を合わせたり、意訳したりした報告となりますこと、ご承知おきください。

 「まず『船』は何を表しているかなんだけど、夢や希望を追い求めて航海するっていうイメージなんじゃないかな」
「海のような広い世界を切り拓いていけって感じかな?」
「どこへでも行けるよって言ってる感じ」
「船は転覆しちゃう。転覆って挫折を表している。で、挫折するかもしれないけれど、それでもあきらめないで航海を続けていこう、強い気持ちをもって乗り越えようっていうことなんだよ」
「世界は広いし、様々な人がいる。そういう人たちに出会って、様々な生き物のを見ていきなさいよって」
「そう。船の乗務員や船長さんみたいに」
「飛行機は船よりも速く進める。燃料は船よりもたくさん必要だし、墜落したら船と違って助かる見込みはほぼない」
「2つに違いはあるけど、飛行機も広い世界に行けるよね」
「いずれも広い世界に飛び出していけって」
「じゃあ、『象』って何を表してるの?」
「象は大きくて力強い」
「動物だから命を大切にしてほしいと思ってる。心もね」
教師「船や飛行機、象に比べると『つぼ』っていうのはちょっと違う感じだ。何を表してる?」
「つぼは割れやすい。人間はガラスのようなもの。だから大切にしようっていうこと?」
教師「つぼは割れやすいけれど、ものすごく高価になったりもする。あと、様々なものを入れられるよね」
「ああ、何を入れるのか」
「学んだことや信頼した人とか、気持ちとか?」
「そう。で、そういうのはみんな紙や鉛筆、粘土で作れるんだ。そういう何ということのない材料で」
「そうだね。紙、鉛筆、粘土も人が作ったもの。船とか飛行機とかつぼとかって人が作ったもの。そういうものを使って、私たちにも船や飛行機が表現してるものを生み出してほしいって編集部は願っている」

教師「教科書にはこの詩のタイトルが書かれていない。どんなタイトルがつくと思う?」
「この詩には『生まれる』って言葉がたくさん出ているでしょう。だから『生まれる』がいいと思う」
「私は『創造』かな。生まれると同じ意味かもしれないけれど。この教科書自体にも『創造』ってタイトルがついてるし。その冒頭の詩なんだから」

子どもたちも私も、大変リラックスした中でのp4cでしたが、詩中のメタファーに着目して読解した彼らはさすが。素晴らしい対話、素晴らしい深読みでした。
最後に子どもたちに自己評価することを求めました。次の3点です。「一生懸命考えましたか?」「友だちの発言をよく聞きましたか?」「深読みって楽しいなと思いましたか?」の3つです。そして子どもたちはいずれの設問にも多くの子が肯定の挙手をしていました。
お菓子とかつまんで、紅茶とか飲みながら対話してもいいなって思えました。
大人が哲学対話するときって、そうしてもますものね。6年生ももう大人って感じかな。
いい対話でしたよ、君たち。