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9月12日【5年学級活動p4c】罪悪感と後悔
5年生は学級活動でp4c。
授業の冒頭に、担任がニュース映像を流します。高校生4人組が川に飛び降りようとしている女性を引き留め助けたという出来事です。
この動画を見て、子どもたちは様々な感想を交流しました。
「高校生が力を合わせて女性の命を救ったのはすごい」「勇気をもって自殺を思いとどまらせたのはすごい。冷静にプラスの言葉がけをしていたのがよかったのかなあと思う」などなど。
子どもたちはこの動画で感じたことと自分の今までの体験を振り返って、みんなで対話したいことを出し合いました。
そして、その中から選ばれた問いは次の問いでした。
「罪悪感とは何か?」
う、うわー!重っ。
私としては、「勇気を出すってどういうこと?」とか「どうしたら勇敢になれるの?」なんて問いになるのかななんて、おぼろげながら考えていたのですが、予想は全く、まっっっっっったく外れました。なはははは。まあ、こういうこともありますわな。
で、どんな対話になったのでしょうか。
結論から言えば、対話は2時間にも及び(途中で給食・昼休みを挟みました)、特に後半は子どもたちの体験を踏まえた発言がバンバン出されたのです。
後半の様子は記録していなかったため紹介できませんが、対話の一部分だけチラ見せ。
「罪悪感と後悔。『あの時何かしとけばよかった』と言うのが後悔」
「そうだね。『何かをしなかった』から抱く後悔もある」
「後悔って単純じゃなくて、複雑な気持ちだと思う。ぼくは、道路でぐたっとなっている猫を見つけたことがある。大丈夫かなと思って通り過ぎたんだけど、次の日その猫は死んでました」
一同し~ん。空気が重いです。
「後悔とは少し違って、罪悪感って秘密をもっているときに感じるもの」
「罪悪感って後悔に近いかも」
「ねえ、『複雑な気持ち』ってどういうことなの?」
「なんというか、心がモヤモヤするって感じかな」
「気持ちが整理できなくて、自分でも分からないってことなんでしょう」
「そう。イライラするとか悲しいとかって気持ちが混ざり合ってるっていうか」
「様々な気持ちが混ざって、言葉で表現できないんだよね」
「みんなは、罪悪感を感じた体験ってある?」
「私は妹のお菓子を勝手に食べちゃったことかな」
「ははははは。私も姉のお菓子を食べちゃったことある。罪悪感」
「バスケットボールの大会の時、もっと頑張れば勝てたかもしれないって思えて、罪悪感を感じた」
「じゃあ、あの時何かをしとけばよかったって後悔したことはある?」
「妹にもっと勉強を教えてあげていれば、もっとテストでいい点数取れたかもって思う」
ここで教師が発言。
「罪悪感と後悔って一緒なの?違うの?」
「う~ん。似てると思うけど。この2つの感情って友だちのようなもの」
「あの時やってればよかったっていうのが後悔で、やって失敗しちゃったっていうのが罪悪感、じゃないの?」
「やってればよかったってのが後悔、やったら失敗しちゃったっていうのが罪悪感?」
この後、後悔や罪悪感を感じた時のエピソードがどんどん出されていきました。
子どもたちは時に深刻な表情で、そして時に勇気をもって言葉を絞り出していきました。
結局、全員が語ったのじゃないかしら。
全員が、自分たちのp4cとしてこの対話をとらえ、主体的にさらによりよい学級を創っていこうという決意に繋がってくれたら嬉しいです。
子どもたちが学びのオーナーシップを発揮したこの時間。
2時間かけた甲斐があったこの対話は、今後にとって大変価値ある対話になりました。
5年生のみんな、これからもセーフティ溢れる学級を一緒に目指していこうね。
9月12日【6年学級活動p4c】卵が先か、ニワトリが先か?
6年生はノンジャンルでp4c。子どもたちが設定した問いは「卵が先か、ニワトリが先か?」です。
おおー!世界中の大人が頭を悩まず、大問題に6年生が挑みます。
「卵が先か、鶏が先か」問題の概要について確認した後、p4cの開幕です!
「えーっと、卵はたんぱく質が多く含まれていて・・・、で、鶏の体にもたんぱく質が多くて・・・、う~ん、大体そんなところです」
「生き物の進化って突然変異が重なってどんどん変わっていったんでしょう。だから、ある生き物が鶏になって、それ鶏が卵を産んだんだから、鶏が先」
おおーっと!これで世界の論争に終止符が打たれるのでしょうか!?
「生物は海の生き物が進化したものだから、生き物の大もとは海の生き物。一番の大もとは卵じゃない」
私がもうこの段階で発言。だっていい考えを思いついちゃったんだもの。言わずにいられません。
「私ね、動物園の猿の前でずーっと見ていたんだけれど、猿は人間に進化しませんでした。生き物が生きているうちに変わるってことはない。卵が産まれて、孵った生き物が突然変異だったりすることで、進化するんだと思う。だから卵が先」
現段階の考えで手を挙げてもらうと、「卵が先」18、「鶏が先」3という結果に。
「私は『卵が先』派なんだけど、校長先生の意見に賛成です」
「私は『鶏が先』派。猿から進化していった生き物と鶏も同じだと思う」
「ぼくは、やっぱりたんぱく質が関係してると思うんだけど・・・。う~ん」
タンパク質について、このお子さんは語るのですが、スッキリ整理した形で言語化するのが難しいようです。
しかし、たとえぼんやりした考えであってもみんなに聞いてもらいたい、発言したいと思うお子さんの姿勢と、このお子さんの発言を聞き洩らさずに聞こうとする周囲の子の姿勢!
セーフティ溢れる素晴らしい空間です!
「目が見えなくなった人は、やがてそれを補うように耳がよく聞こえるようになるって話を聞いたことがある。生きている途中で生き物は変わることってあると思う」
「でも、遺伝子って変わらないし、遺伝子でその生き物って形とか決まるんじゃないの?」
「別々の種類の生き物が交配して、その時代に合うような子どもができるのかも。ハイブリッド卵みたいなの」
ここで私は反省しつつ、先程の自分の発言を取り消します。だってもっと素敵な考えが思いついちゃったんだもの。
「私さっき随分夢のないこと言っちゃった。生き物って生きているうちは変わらなくて次の世代になって漸く変われるって言ったんだけど、みんなの話を聞いていて生きているうちに感覚が鋭くなることもあるなあって思いました。私たちが大谷選手みたいになりたいって努力しても無駄だなんて考えたくないもんね。だから、努力すれば変われるっていう、『鶏が先』派に転向します!」
「鶏は飛べませんよね。最初は飛べたかもしれないけれど、だんだん飛べなくなっちゃった。でも、その分、すばしっこく動けるようになれた。卵だってたくさん産めるようになった。できないことがあったとしても、別のことがずば抜けてうまくできるようになる」
「ねえ、鶏って、人間が家畜として改良した動物でしょう。だから、卵もたくさん産めるし、肉もよりおいしくなった」
「なんで同じ鳥なのに、そんなに違いがあるんだろう?」
「そうだね。例えばダチョウって、ほかの鳥に比べて大きいし、首も長い。で、めっちゃ走ってる。そういうよさが環境に適応してていいのであれば、同じような子どもが卵として生まれる」
「鳥は鳥でも、種類が違うんじゃない?」
「牛や馬は卵じゃなくて、親の形で生まれてくる。なんで?」
「生物は環境によって変わってくるし、進化していく。馬なんて生まれて数時間後にはもう走れるみたいだよ」
「必要だから発達するんだね」
いつしか対話は子どもたちなりの進化論に発展していきました。
そして、あるお子さんがまとめの総括討論!
「〇〇さんが言ったように、生き物も私たちも、みんながみんな同じなわけじゃない!」
「そうだよ。種類が違うし、個体差もある。私たち一人一人が違うように」
突然変異で進化し始めた生き物も、同じ種内でも変異せず進化していない生き物もいる。人間も同じで、それぞれの多様性は尊重されるべきであるというようなところに対話は着地したのかしら。はい、着地したとしましょう。
それにしても想像だにしなかったところに到達しましたね。
おもしろいなあ、子どもたち。おもしろいなあ、p4c。
私も子どもたちに交じって対話したp4c。
私は世界の大問題に今更挑むなんてと思いましたが、よく考えてみると、この問題にじっくり取り組んでみることはなかったことに気付きました。
私も対話の中で子どもたちの発言に揺さぶられ、考えを変える場面もあるほど、子どもたちの発言は力のあるものになっていたことにも気づきました。
すごいなあ、君たち。
週1でp4cに取り組んでいる6年生。p4c名人への道まっしぐらです。
8月30日【6年理科p4c】てこは人を幸せにするか?
6年生理科。2学期最初の単元は『てこのつくりとはたらき』です。
で、いきなりp4cやっちゃうんだなー、これが。
アルキメデスの「我に支点を与えよ。そうすれば地球をも持ち上げて見せよう」という言葉を紹介し、新単元の教科書該当箇所にざっと目を通した後、子どもたちはみんなで話し合いたい問いを出し合いました。
そして選ばれた問いは次のものでした。
「てこを使って、人を幸せにできるのか?」
おー!しびれますねー。
では早速行ってみましょう!
「ぼくは幸せにできると思う。大切なものが重いものの下敷きになっちゃったときに、てこを使えば取り出せる」
「私も幸せにできると思う。てこの仕組みを利用した道具が世の中にはたくさんあることがその証拠」
「そうそう。災害救助の時に、重いものを棒で持ち上げることができるから。それで命を救うこともできると思う」
「消防の面でも役に立つよね、多分」
「もしてこがなかったと考えると大変なことになりそう」
「てこは既にいろいろなところで使われていて、生活に役立つことが多いと思う」
「皆さんに質問します」
おっ!出ましたねー。6年生、自分たちで対話を回していきます。
「てこで人を幸せにできる道具ってどんなのがあるの?」
おおー!対話の全体像のみならず、単元の学習をも見据えたこの問い。いやー、驚きました。ホントすごい!
「釘抜きがあるよ」
「あとね、はさみとドライバーの写真が教科書に載ってる」
「缶ジュースのプルタブもそうなんじゃない?」
一同、どよめき。みんななるほどーって顔してます。今の段階では、てこの勉強って全くしていないんだよねえ。すごいよ、君たち。
「実際にてこの仕組みが使えるか分からないんだけど、重いものを持ち上げるときとか、こんなときにてこの仕組みが使えたらいいなあってことある?」
「テレビを持ち上げるときとか、てこの仕組みが使えるんだったらいいなと思う」
「電車が脱線しちゃったときに、てこの力で元に戻すんじゃない?」
「家を持ち上げるときとか、そう!引っ越しのときとか」
ここで私が発言。
「ねえ、みんな。まだ全く勉強してないからもちろん分からないと思うんだけど、アルキメデスの言葉にある『支点』ってどんな点だと思う?」
「棒を支える点」
「重い物の重さをちょっとだけ少なくすることができる点」
そんなこんなでタイムアップ!
単元の学習を始めるにあたって、学習の概要について子どもたち同士の意見交流・対話をすることによって、単元の学習の見通しをもち、学習への期待を高めることをねらいとしたこの対話。
子どもたちは、このp4cでてこのついて勉強したいって気持ちが強くなったって言ってます(私への忖度もあるのしから。うふふ)。
8月30日【3年学級活動p4c】どうしたら、楽しく過ごせる学級になるの
3年生も2学期スタート2日目にして早くもp4c。
まだそれほどp4c体験の頻度は高くない子どもたちですが、やる気は十分!
大いに期待していますよー。
今回は3年教室を離れ、視聴覚室を舞台に対話を繰り広げます。
教科は学級活動。「2学期は円滑な友だち関係を構築するにはどうしたらいいか」「よりよいクラスにするにはどうしたらいいか」子どもたちは対話しながら深めました。
まずは、p4cの基本的なルールの確認。コミュニティ・ボールの渡し方(下投げで、相手の名前を呼びながら、優しく優しーく投げるのです)を練習しながらセーフティを高めます。みんな、なかなかいい調子。
そしていよいよ対話です。問いは「2学期、3年生が楽しく過ごせるには?」でスタート。
「ケンカしないで、仲良く過ごしたらいいと思います」
「そうだね。もしケンカしたら楽しくできないものね」
「それに1、2年生も真似しちゃうよ」
ここで教師が発言します。
「じゃあ、ケンカしているのを見たら、どうしたらいいと思う?」
「近くの人に相談したらいい」
「近くにいた大人とかね」
「相談もいいけど、まずはケンカを止めるのが最初かな」
「その後で、ケンカしている人に話を聞く」
「話を聞くのが大事ってこと?」
「そう」
「それと、いじめもダメ」
一同、「ああー、そうだねえ」。
ここで教師が発言。
「ねえ、なんでいじめはダメなの?」
おおー!敢えてその意味を問う作戦ですね。子どもたちの理解を確かなものにするための発言。やるなー、担任の先生。
「だっていじめられた子はかわいそう」
「そうだよね、深く傷つく」
「そうそう。いじめをしていると、今度は自分に友だちがいなくなっちゃうよ」
さらに教師は問います。
「いじめを見たらどうしたらいいんだろう?」
おおー。子どもたちはどう答えるのかしら?
「人を叩いている人がいたら、叩いている人に理由を訊く」
「私はまず叩くのを止めさせて、その上で叩いている人からも、叩かれている人からも話を聞くかな」
「なんで両方から話を聞くの?」
「両方とも嫌な気持ちになってると思うから」
「だって、叩かれている人はもちろん嫌な気持ちだろうけど、叩いている人も怒っているから。いい気持じゃないと思うよ」
「うん。本当は仲良くしたいのに、気持ちが落ち着かないっていうか・・・」
「話は戻るんだけど、勉強をする上で楽しくなるにはどうしたらいいんだろう?」
「私は先生に褒められると嬉しいし、楽しくなるよ」
「友だちに褒められても嬉しいよ」
「そうだね。勉強を教えてもらった人から褒められると嬉しい。それが先生でも友だちでも」
「私は勉強が楽しいって思うのは、勉強が頭の中に入るときです」
「できなかったことができるようになったときも嬉しいです」
「ぼくは、テストで100点とったときかな」
「テストでいい点数取れるとやっぱり嬉しいよね。その後の勉強も楽しくなる」
「自分が失敗したときに、友だちとかから『大丈夫、できるよ』って言ってもらえると嬉しいな。やる気になる」
セーフティ溢れる学級になる方法や勉強が楽しくなる方法など、素敵な発言が盛りだくさんのp4c。
p4c後、なんかとってもいい気持ちになったのは、私だけではなかったと思います。
3年生のみんな!みんなで安心して過ごせる学級をつくっていこうね!
対話後。
みんなが視聴覚室を出ていった後で一人のお子さんが私のところに来ました。私が書いていた対話記録を見せてほしいと言うのです。
「はい、どうぞどうぞ」と対話記録をどさっと渡すと、そのお子さんはじっくりじっくりそれを読んでいました。そして一言ぽつり。
「校長先生。私ね・・・p4cで話せなかったの・・・」
とっても寂しそうに言うのです。あああー、分かる!分かるよー、とっても!発言したかったんだけど、できなかったんだよね。そうだよねえ。みんなと一緒にやりたかったんだよね。
私は言いました。
「p4cで発言するって大事なことだし、発言するととってもいい気持ちになるんだよ。でもね、もっと大事なことは、友だちの発言をよく聞いて、そしてよーく考えることなんだよ。あなたはそれをやっていたでしょう。とっても立派だったよ。そして、話せなくて残念っていう今の気持ちをしっかり持ち続ければ、そのうち話せるようになるよ、きっと。あせらずに対話を楽しんでいこうね」
そのお子さんは、こくんと頷いて友だちの後を追うように視聴覚室を出ていきました。
このお子さんをはじめとする、子どもたちのよりよくなりたいという気持ちをしっかりと受け止めながら、私たち学校職員一同、すべての子どもたちの幸せのために全力を尽くします!どうぞよろしくお願いいたします。
7月19日【6年家庭学習】p4cの振り返り
この前日に6年生は「さん付け」をテーマにp4cをしました。
あるお子さんが、家庭でそれを振り返って作文を書いてきましたので、ここでご紹介します。
「今回のp4cは、あまり意見がまとまらないものでした。
私は、『さん』を付ける人は、大切にしている人、よく知らない人などに対してです。よく知らない人からは、私は『ちゃん』と呼ばれたくないので、『さん』を付けます。
話は変わるのですが、〇〇さんが『チャンス』『きっかけ』と言った発言で思ったことがあります。このp4cこそが『きっかけ』で『チャンス』だと。他の意見を聞き、違う考えに触れて、自分とは違う考えがあることに気付き、そして自分の考えや自分自身を振り返る。こういうことが『きっかけ』となり、『チャンス』になるのだと思います。校長先生がどう呼ばれたいか知ることもできました。
そして、ここからどうするかは、人それぞれ違うと思います。」
どうですか!!私はしびれました!!ですよねー。
友だちの考えを大切にしながら受け入れ、自分の対話における明確な意思表示とさらに深く考える、あるいは考え続けるこの姿!本当に素晴らしいことだと思います。
私が大切にしたい子どもたちの姿の一つは、「問い続ける」です。*この場合「考え続ける」と同義です。
「さん付け」をテーマにしたp4c。またやって、もっと深く考えたいねえ、みんな!
写真はこの日、理科のテストに取り組んでいる6年生の様子です。
7月18日【6年学級活動p4c】「さん付け」について
当校では子どもたちが互いを呼び合うときに、あだ名や、『君』ではなく『さん』を付けて呼ぶように指導しています。いわゆる『さん付け』です。指導しているとはいえ、なかなか徹底しないのが現状です。多分、子どもたちの中では、『さん付け』がしっくりきていないのでしょう。さん付けの意義について納得していないとでも言ったらいいでしょうか。この状況について、子どもたちは子どもたちなりに理解していたのだろうと思われます。
この日、1学期の振り返りとしてのp4cで、子どもたちが問いとして選んだのは、なんと次のものでした!
「『さん付け』と『ちゃん付け』、『くん付け』はどれがいいのだろう?」
かー!しびれますねー!
『さん付け』は当校が教師主導で進めている生徒指導の根幹。ここに、子どもたちが「一言ものもーす!」って感じで疑義を申し立てたということなのでしょう。やるなー、6年生。
では対話の概略を見ていきましょう。
「今まであだ名や呼び捨て、『ちゃん付け』だったこともあって、『くん付け』や『さん付け』は、相手との間に壁がある感じがする」
「『さん付け』されると悪い気はしないけれど、『くん』『ちゃん』の方が、仲良し感があるっていうか」
「私はみんなとちょっと違って、ある時みんなが『ちゃん付け』とかあだ名で呼び合っていだんだけれど、私だけ『さん付け』で呼ばれたことがある。その時はなんか、つらい気持ち」
「年上の人には『さん付け』がいいけれど、同級生とかに対しては『ちゃん付け』『くん付け』の方がいいと思う」
「急に『さん付け』されると、嫌われちゃったかなって思っちゃう」
ここで子どもから全体への質問が出されます。6年生、p4cが分かってるじゃないですかー!しびれるなあ、もう!
「ねえ、みんなは『さん付け』で呼ばれたいときと『くん付け』で呼ばれたいときって、それぞれどんな時?」
<中略>
「『さん付け』されたくない人もいると思うよ」
なるほどー。相手を大切にしようと思って『さん付け』をするんだけど、相手によっては『さん付け』をされたくない人もいるってことね。ほーほー。
「私もみんなに訊きたいんだけど、今まであだ名や『ちゃん付け』で呼ばれていたんだけど、急に『さん付け』されたらどう思う?」
また出ました!子どもたちが対話を回す発言!6年生、p4cに慣れてきたねー、素晴らしい!
「そうだなあ。私は違和感ていうか、ちょっと変な感じがするかな」
「私は知らない人にだったら『さん付け』しても違和感ないなあ。友だちだったらどうかな。みんなはどう?」
「友だちになら、『さん付け』が嬉しいなあ、私は」
そして、対話を動かす子どもからの発言がまたまた登場。
「みんなに訊きたいんだけど、どういう時に『さん付け』に違和感なくなるの?」
「ぼくは、偉い人だとか尊敬している人に対してなら『さん付け』をするのに違和感ないなあ」
さらに、子どもたちは対話を動かします。もう、すごい!
「仲がいい人に対して、急に『さん付け』するのってどう?あるいは仲のいい人から『さん付け』で呼ばれるのは?」実際に『さん付け』する場合を想定した実践的な発言ですね。
この発言以降、慣例から見た場合の違和感について様々語られていきます。
<中略>
ここで私が「くん」「さん」といった呼称について歴史的な経緯、さらには性的マイノリティについてなど若干の解説を加えます。
「校長先生の話を聞いて、心は女性なんだけれど体は男性の人、あるいはその逆の人もいるんだなあって思いました」
「性別が定まっていない人もいる」
「体の性別によって『さん』『くん』を使い分けられたら、心は女性なのに『くん付け』されるってことになるよね。それはちょっとなあ」
「『さん』は偉い人たちに使うっていうイメージがある。いっそのこと、『さん付け』じゃなくて、『くん付け』にしたらいいんじゃない?」
「う~ん。偉い人に対して『さん付け』していいの?例えば、校長先生に『〇〇さん』っていうの?〇〇校長先生じゃなくて」
「『さん付け』は相手を尊重することになると思う」
ここでみたび私が発言。教務室でのエピソード※を披露しました。
※教務室でも教職員同士は『〇〇先生』ではなく、『〇〇さん』って呼ぶように提案したのです。
「先生方がお互いに『さん付け』するのがいいと思う」
「私もそっちがいいと思う」
「先生方以外でも、『さん』を付けて呼び合ったことがきっかけで仲良くなることもあるんじゃないかな。子どもだって『さん付け』は仲良くなるきっかけになることもあると思う」
「私は『くん付け』で呼んじゃうこともある。『くん』を付けているからって、相手を認めていないってわけじゃないけれど・・・。でも『さん付け』は『あなたを認めていますよ』ってきちんと伝えることになると思う」
教師も発言します。
「今まで『〇〇先生』って呼んでいたから、校長先生から教員間でも『さん付け』を提案された時にはやはり戸惑いました。『さん付け』する意義は分かるけれど、これまで慣習としてやってきたことを変えることは難しいと感じています。タイミングと、そして勇気が必要かなと思います」
この教師の発言を何と子どもが引き取ったのです!
「みんなは『さん付け』できるようになるタイミングってどんな時だと思う?」
「そうだなあ。飲み会とかで仲良くなってからとかがいいんじゃない?」
ちょちょちょ、ちょっとまさか君たち、『さん付け』する前に宴会しようってんじゃないでしょうねえ、ははははは。
「生活目標とかで『さん付け』を全校一斉に取り組むときとかがいいと思うよ」
以上、この日のp4cもノンストップで30分間くらいの対話だったかしら。
我らが6年生が4月25日に初めてp4cを体験してから早4か月。今回が10回目くらいになるのでしょうか、と6年生が言ってます。
途中意見を出す勇気がなくてずっと黙り続けてしまって、私に喝を入れられたのが遠い昔のことのようです。
対話の流れをご覧いただければ、ほぼ子どもたちだけで対話を回しているのがお分かりになると思います。君たち、大きく成長したねえ。感無量。
こりゃあ、教師はいらないかもね、とほほ。と言いつつ、頭の中で嬉し涙が流れ続けます。
文部科学省が提唱している「主体的・対話的で深い学び」の一つの形は、まさにこの日のp4cだと言えるのではないでしょうか。
とは言え、今日の問いである『さん付け』についてはまだまだ議論が乾きそうにありません。
この先何回か対話を行っていく中で、子どもたちは深い考え、広い考えに到達することができるのだと確信しています。
お見事、6年生のみなさん!またやろうね💛
7月5日【3年道徳p4c】聞くことは、相手を大切にすること
3年教室を覗くと、机は黒板に向けた聴講スタイルの配置ですが、子どもたちの手にはコミュニティ・ボール。
道徳の授業中に急遽p4cを始めたのじゃないかしら。
数日前、コミュニティ・ボールづくりでp4cスタイルを体験していた子どもたちですが、その時に比べると、この日は聞く姿勢が素晴らしかった!発言している子どもの方向に身体が向くように、わざわざ椅子に座る向きをグルグル変えながら、しっかり聞こうとしているのです。自分の頭の中の考えをうまく言語化するために、なかなか言葉にすることができなくて、発言するまでに時間がかかったお子さんの時でも、子どもたちはずーっとその子が話するを待っているのです。ホント素晴らしい!
ちなみに最後の写真。子どもたちは私の方を向いて話を聞いているのですが、子どもが話していても、こうして体の向きを変えて聞いていたのですよ。自分が話しているときに、こんな聞き方をされたら、もう自己肯定感爆上がりですよね!
授業後、担任が問いました。
「今日は話の聞き方が素晴らしかったですね。人の話を聞くときに大切にしたいことは何ですか?」
すると子どもたちは「静かに聞くことです」と回答。
この発言を受け、担任は「そうだね。静かに聞くことは、『あなたの発言を大切にしていますよ』って伝えることになるし、これも相手に親切にするってことなんだよね。さらに友だちの発言に対して自分はどう思うかって考えながら聞くことも大事だよね」と話しました。
3年生のみんな!君たち、どんどん対話が上手になっていくねえ。
6月25日【3年p4c】みんなでコミュニティ・ボールづくり
3年教室ではp4cで使うコミュニティ・ボールづくりを全員でやっていました。
p4cスタイルそのままに、一人ずつ、毛糸を芯棒に巻き付けながら発言していきます。
互いの発言を聞き合いながら、全員でコミュニティ・ボールを作るという活動をとおして、p4cスタイルを理解するという意図が担任にはあったのです。
完成したコミュニティ・ボールは、子どもたち全員にとって「自分たちが作ったコミュニティ・ボール」「私たちのコミュニティ・ボール」。これから学級のマスコットとして、かわいがられることでしょうね。
出来上がったコミュニティ・ボールの感触を楽しんでいるときの彼らの顔ったら!
3年生は、このコミュニティ・ボールを使って、どんな対話が生み出していくのでしょうか。楽しみですね。
対話を重ねることによって、どんどん学級のセーフティ(心理的安全性)とワンダー(知的好奇心・課題意識)を高めていってほしいと思います。
6月13日【6年学級活動p4c】このクラス、いいと思う人ー?
修学旅行は、実施が1週間も前だったなんてにわかに信じがたいほど、インパクトの強かった活動でした。
さて、この日6年生はp4cで修学旅行を振り返ります。
彼らはとっても楽しかった修学旅行で何を学んだのか!
早速対話の様子を見ていきましょう。
問いは「また修学旅行に行きたいか?それはなぜか?」です。
では、この問いを出したお子さんから、どうぞー!
「私は佐度にまた行きたいです。人、自然がすばらしかったと思います。そして、今度はあの海で泳ぎたいです」
「私もまた行きたい。みんなで行けてとっても楽しかったです」
「私もです。一泊二日だけだと、まだ見ていない佐度がある。見ることができた場所もあるけれど、もっとじっくり見たい!」
「はい。たくさんお土産も買いたいです」
「みんなに質問です!」おー!彼ら、自分で対話を回す術を手に入れつつありますね。
「今度行くとしたら、佐度のどこに行きたい?」
「そうだなあ、ぼくはたらい舟。この前行ったけれど、また行きたいなあ。上手に漕げるようになりたい」
「私は、あの濃い青色の海」
「山にも登ってみたい」
「ねえ、みんな。今回の修学旅行で一番楽しかったことは何?」
6年生、自分たちでどんどん回していきますね。
行きたい観光地から、視野を広げる投げ掛け。視点の転換を子どもが図るなんて!驚き!
「私はだんぜんホテルでの滞在。友だちと過ごしたあの時間がとっても楽しかった」
「ちょっと質問を変えるんだけど、今回みたいな短期間の観光じゃなくて、佐渡に永く住みたいですか?」
おー!もう、子どもたちぐるぐる回していきますね。ぐるぐるぐるぐる!すごいすごい!
「今回の旅行はとっても楽しかった。佐度はすごくよかった。でも、ずっと住むとしたらどうかな?」
「うんそうだね。慣れたら新鮮味がなくなるだろうし」
「佐度の人たちが、胎内に住みたいかというのと、同じような感じなんじゃない?」
「ぼくは住んでみたいなあ。自然が素晴らしかったし、ほかにも楽しいことがたくさんある」
「うん。熊がいないから山に入っても安心だよね。佐度では狸が一番大きな野生動物だって、バスガイドさんが言ってた」
「ぼくも佐度に住んで、砂金をじゃんじゃん採りたいなあ」
「そう、ぼくも修学旅行ではたくさん砂金を採ることはできなかったけど、親切に教えてもらえたから、嬉しかった」
「私は佐度はよかった。でも、観光として行った方がいいんじゃない?」
「佐度はさ、みなさんいい人だったよね」
「私もとっても楽しかった。活動班とか宿泊班とか、班の人たちと一緒だったからだと思う」
「帰りのフェリーの中で、みんなと過ごしたからよかった」
「カモメのエサやりも楽しかったなあ。あれもみんなでやったしね」
「食事もみんなで摂った」
「私は部屋で友だちと一緒に過ごせてよかった」
ここで教師が問い掛けました。今回初めての介入です。
「佐度よかったし、楽しかったよね。次に行くとしたらまたみんなで行きたい?それとも一人旅がいい?」
挙手で確認すると、「みんなで行きたい派」が大多数、「みんなでも、一人でも行きたい派」がそこそこの人数でした。
「私は、またこのメンバーで行きたいな」
「楽しいし、一緒に過ごしたり活動したりすることでもっと仲良くなれると思う」
「うん。私たちは保育園からずっと同じメンバーだった。気心が知れるっていうのかな」
「またみんなで行けば、もっと私たちの人間関係は深まると思う」
「このクラスはいろいろな人がいるでしょう。だから楽しいの」
「私はみんなとでもいいんだけど、一人でも行ってみたいなあ」
「一人旅はみんなで行く旅とはまた違ったよさがあると思う」
「結局、みんなと一緒でも一人でも、また行ければいいってことかな」
以上、35分間。ノンストップの対話!
対話全体を俯瞰してみると、「人と人とのかかわり」の中で子どもたちは楽しみや喜びを感じていることが分かります。
これは運動会やこのp4cでも同じことが言えそうですね。
さて、対話後、挙手による振り返りの時間。
6年生の女の子がみんなに問い掛けました。
「この対話で発言できた人ー?」7~8割の子が挙手。
「この対話でよく考えた人ー?」全員が挙手。
「えーと・・・。このクラス、いいと思う人ー?」すると、もうこれ以上ないってくらい全員が張り切って挙手。
今日、欠席だった子もこの場にいたら、やっぱり手を挙げていたのじゃないでしょうか。
この振り返りを見ていた私は、心の中で号泣!涙ブワーですよ、ブーワーー!
保護者の皆様、相当な費用が掛かったにもかかわらず、この修学旅行に子どもたちを送り出してくださって、本当にありがとうございます。
6年生は、しっかりと学んできました!そして、学級の信頼関係もまた一段と強固になったのだろうと思います。
修学旅行はまだ終わりません。今回の学びを一般化し、子どもたちはこれからの生活の様々な場面で生かしていくことでしょう。
ありがとうございました。引き続いてご支援いただけますようお願い申し上げます。
5月31日【6年p4c】なんかますます覚醒してきたなあ、6年生のみんな!
p4cを行うごとに、バンバンいい意見が出るようになってきている6年生。友だちの考えを大切にしながら、考えることを楽しんでいるようです。
さて、この日はノンジャンルで問いを募ったところ、いい問いがたくさん出されていきました。そして、数多ある素晴らしい問いの中で、今回選ばれたのは次の問いです。
「人は最終的には死んでしまうのに、どうしてそんなに苦労してでも生きようとするのか?」
かー!深い対話になりそうなにおいがプンプンしますね。
では、対話の様子を早速見ていきましょう。
問いを出したお子さん「みんな、いい企業に就職して、お金を稼ごうってがんばるけれど、いくらお金を稼いでも、人は最後には死んでしまうよね。なのに、どうしてがんばるんだろう?って思いました」
「私たちはいずれ死んでしまうにしても、それまでは生きていかなくてはならない。そうなるとお金が必要でしょう」
「いずれ死んでしまうって言ったらそうなんだけれど、でもやりたいことや楽しいことは生きているうちにしかできないことだよね」
「人生は一度きりだけど、一度きりだからこそ、がんばろうって思うんじゃない?」
「やっぱり後悔したくないし。がんばらなければ後悔しちゃう」
「死ぬのは、あるいはもうすぐ死んでしまうとなったら怖い。でも仲間がいれば。孤独にならなければ、耐えられるのかな?」
「人とのかかわりがストレスになっちゃうこともある。でもだからといって自殺するのは・・・」
「うん。死んだら、大切な人とのかかわりもなくなっちゃう。それは嫌だな」
「そうなんだけれど、自殺する人は他人には分からないくらい苦しんでいると思うよ。自殺はしない方がいいって分かっていても・・・」
「諦めない気持ちが大切だと思う」
「うん。自殺したくなることもあるかもしれない。そんなときでも、そこを乗り越えたら、また生きていこうって思うんじゃないかな」
「そう。生きることに必死な人もいるのに、自殺するなんて」
「生きていく中で、つらいことは絶対にあると思う。でもそれを乗り越えたら気持ちは変わると思う」
「乗り越えられる人はいい。でも本当に耐えられない状況になっていたら?今すぐ乗り越えることができないときはどうしたらいいんだろう」
「う~ん。でも、自分の一時的な思いだけで死んじゃったら・・・」
「自殺したら、遺された人たちはすごく悲しむと思う。大切に思っている人を悲しませないようにしたい」
「人間関係の中で、いじめとか起きちゃうかもしれない。だからいじめをなくそうっていう思いが大切なんだ」
「そうだよね。自殺させたくない。自殺する人を少なくしたい!」
「人は苦しんで死ぬのが怖いから、できるだけ長生きしようって思うんだ。できるだけ長生きしようって。だからがんばって生きている」
「大切な人を悲しませたくないから自殺しないって考え。そのとおりだと思う。でも犬とか猫とかって一匹しかいないし・・・。そこはどう考えたらいいんだろう」
教師「自殺しようと思ったんだけど失敗して死ななかった人に対して調査した結果があるって聞いたことがある。生還した多くの人は『死ななくてよかった』って思っていたらしいよ」
「人はそれぞれ悩みをもっている。でも・・・」
教師「私の両親は寿命で亡くなったんだけど、最期まで一生懸命生きようとする意思を感じたし、そういう生き方に尊さを感じるよ」
以上、約25分間。圧巻のp4c!
対話の途中で、新たな問いも生み出された、本格的なp4cとなりました。
もうこれ以上何も言うことはないでしょう!
恐るべし6年生!お見事!!
ちなみに一番最初の問いを選んでいるところの写真。実はこれ休み時間の光景なんですよ。6年生の対話に対する熱を感じます!